ハジマリの物語

「そこにモンスターボールがあるじゃろ。その中に」
「相棒となるべきポケモンが居る。ですね」
「そうじゃ。くさタイプのフシギダネ、ほのおタイプのヒトカゲ、みずタイプのゼニガメじゃ」

目の前に立つ老人、オーキド博士は手元のスイッチを操作すると、
3つ並べられたモンスターボールが開き、それぞれが飛び出てくる。
背中に巨大な種を背負ったカエルのようなフシギダネ。
尻尾が燃えているトカゲ怪獣みたいなヒトカゲ。
そして、二足歩行できるようになった亀、ゼニガメ。

だが、ひとつだけ違和感があった。
ゼニガメの声が聞こえなかった。

「どうしたのじゃ?」
「大丈夫?」
「ダネダネ」
「カゲー?」

今、この時点で自分は声を出していない。
ダネダネ鳴くのがフシギダネ、カゲカゲ鳴いてるのは、まあヒトカゲだろう。
最初に声をかけてきたのは、オーキド博士。
というか、人間はオーキド博士と自分しか居ないはずだった。
そして、浮かぶ疑問。

「すると、大丈夫と聞いてきたのは誰なんだ?」

「ボクだけど」
「…まさか、ゼニガメ?」
「もしかしなくても……え?」
「カイ君、君は一体何を言っているのかね?」
「博士、俺はこいつを相棒にします。こいつの言葉が分かるみたいなので」

不思議そうにこちらを眺めていたゼニガメを抱きかかえ、博士に宣言する。
「ゼニガメを選ぶのはかまわんが…言葉が分かる?」
「ええ、原理は分からないですが、調査も含めて」
「うーむ…、ワシには分からんがまぁ、いいじゃろ。ほれ、ポケモン図鑑じゃ」
「…捕獲すればいいんですね」
「うむ。サービスとしてフシギダネとヒトカゲのデータは入れておる」

それなら三匹全部くれてもいいと思うのだが。
「ワシの身の回り世話する奴もおらんと困るんじゃ」

孫娘はどうした。というか心を読むな。
「細かいことは気にするものではないぞ。ほれ、冒険の舞台が待っておる」

こうして、ゼニガメ…セイバーを相棒に、旅たつことになった。