マサラタウンを出て数日。
カイト達はトキワシティのポケモンセンターに来ていた。
「ここで待っているはずなんだけど…」
「カイト!無事に来たんだね」
声を掛けてきたのはユウキ。
従兄弟であり、先輩トレーナーとも言える相手である。
「何匹ぐらい捕まえた?」
「もらったゼニガメと…コラッタだけかな」
「ふーん…。それなら一緒に22番道路に行かない?1番道路とは違うポケモンが出てくるらしいし」
モンスターボールを買い込み、22番道路へと向かう。
死闘の末、オニスズメを仲間にしたカイトとニドラン♂を仲間にしたユウキは
22番道路を後にし、光届かぬ自然迷宮…トキワのもりへと、足を運んで行った。
自然の宝庫とも言われるトキワのもりは視界が悪い。
自由に動き回るむしポケモンと、それを追う虫取り少年たちぐらいしか居ないためか
かつて整備された道路も、けもの道となり木々が生い茂っている。
そのおかげで、五歩進んでは何かと遭遇、バトル、五歩進んでは遭遇、バトルを繰り返すことになった。
「おいらのコクーンをなめるな!どくばり!」
「かたくなる以外を使えるだって?!」
「ビードルから丁寧に育て上げてきたんだ。だから…、強いぞ!」
「セイバーじゃ削る前に倒されるか。飛翔せよ、クロス!」
ゼニガメを戻し、オニスズメを出す。
視界が悪い森とはいえ、とりポケモンの一角であるオニスズメ…クロスは
移動しないコクーンの位置を正確にとらえていた。
「それは危ないから…かたくなれ!」
「堅牢な装甲の隙間を貫け。つつく!」
コクーンのどくばりを持ち前のすばやさで振りきり、背後を陣取る。
クロスのくちばしは正確に命中し、それはコクーンを目覚めさせる一撃となった。
「この光は…」
「まさか、進化するってのか!おいらのコクーン!」
クロスの攻撃がつけたひび割れが全身へと広がっていく。
それに合わせて、内部から光があふれていく。
その光はやがて、コクーンの全身をつつみこみ、姿を変えてゆく。
1分たたないうちに光は収まり、新しい姿が明かされる。
「コクーン…いや、スピアー!おいらたちが勝つぞ!」
「そういう訳には…行かないな。なぁ、クロス!天空に舞え!」
スピアーの進化が終わるのを待っていたかのように
カイトが掲げた手の先ではクロスもまた、進化の光につつみこまれていた。
「オニスズメ改め…オニドリル、か。こうそくいどう…狙い撃て、ドリルくちばし!」
「迎え討て、スピアー!ダブルニードル!」
続けて放たれる槍状のエネルギーを紙一重でかわし、オニドリルとなったクロスのくちばしが
スピアーへと吸い込まれてゆく。
「…おいらたちの負けだ」
「君たちのおかげで、クロスの進化を見れた。ありがとう」
「こっちこそ、スピアーに進化させることができた。お互い様だよ…そうだ」
むしとり少年は、その腰に付けたモンスターボールを1つカイトに手渡す。
「そのキャタピー、君が育ててくれないか?」
「ありがたいが…何故、こんなことを?」
「見たいんだ。君が虫ポケモンを育てたら、どうなるのか」
「わかった。きちんと育て上げるよ」
彼の案内で森を抜けると、その先は…ニビシティが待っている。