デアイの物語

ニビシティジムを突破した後は、3番道路を通り、4番道路へと抜けていく。

カントー地方のポケモントレーナーが旅をするルートはいくつかあるが
共通で通らないといけない難所がいくつか存在する。

4番道路には、その1つであるおつきみ山が存在していた。
とはいえ、おつきみ山は、難所にならないという意見もある。

だが、ひでん技の関係で、オーキド博士からポケモンを受け取ったトレーナーの大半が
ここを「はじめての洞窟」として通る事から最初の難所と言われている。

そんな関係でふもとには、ポケモンセンターが設置されており
遭難者救助の拠点としても利用されているのが現状である。

カイトがたどり着いた時、ポケモンセンターはいつも以上のトレーナーであふれていた。
ポケモンリーグセキエイ本部に近いシロガネ山などでは、吹雪によって入山規制がかけられることもあるが
おつきみ山はそういった事は無い為、こんな事は想定されていなかった。
その為か、ジョーイさん等の人でも足りておらず、混乱が混乱を呼ぶ状態になっていた。

「混雑は予想してましたが、これは混み過ぎて混乱し、混乱が混雑を誘発する悪循環ですかね」
カイトの後ろから入ろうとした少年が、状況を見かねて声を上げる。

「預け終わってる人はいったん外に!」
「回復預け待ちの人は、前後の人を確認しながらセンターの外に向かって列を伸ばして!」
どうやら、列整理を行うつもりのようだった。

彼の邪魔になると判断して、カイトは一旦ポケモンセンターの外に出て
その辺に居たトレーナーに声をかけた。

「これは、いったい何があったんだ?」
「ロケット団だよ。俺の…いや、俺達のポケモンを傷つけたのは」

所属員は全員同じ黒い制服を身にまとう等、資金力も確かにあると思われる
ポケモンの密売、密猟、他人のポケモンを奪う等を行う犯罪結社。
一部のエースは白い特別仕様の制服になると言われるが、事実は不明。

「なんでこんなところに…」
「わかるわけないだろ!いきなり集団で襲いかかってきやがったんだ」

ふたご島等といった『伝説のポケモン』が居るわけでもない。
おつきみ山は『珍しいポケモン』であるピッピが生息しているものの
彼らは、音に敏感なため集団行動をするメリットは無い。

その為、目的が分からず、意図が見えてこなかった。
「化石だよ。あいつらが探しているのはね」
「化石?」
「そう、化石。超珍しい古代ポケモンの、ね。まぁ、僕は発掘出来たんだけど」
「そんなもののために、俺のリザードは…」

手持ちポケモンを全員倒された少年が化石を発掘した少年へと突っかかる。
「待て。殴る前に確認させてくれ。彼らが化石探してるなら、狙われないか?」
「…」
「狙われる…かもしれないな。のんびりしていられない」

化石からポケモンを復活させる技術を研究しているグレン島へ急ごうとする彼を押しとどめ
カイトは、周りを見渡しながら1つの提案を出す。
「それだったら、ロケット団を追い払う方に乗らないか?」
「「は?」」

1人ぐらいなら、どうにかできるだろう。
相手が集団というのなら、1人では厳しい。いや、不可能に近い。
だが、このポケモンセンターに居るポケモントレーナーの力をあわせれば。
「俺のリザードはコラッタは蹴散らせるけど、ズバットが厳しいんだよな…」
「僕はズバット倒した後に、コラッタのひっさつまえばにやられたんだ」
「それって、ズバットとコラッタをそれぞれ担当すれば勝てるってことだろ?」
「なるほどね。」
「ああ、それなら俺でも、俺達でも勝てる気がする」

「いい案が浮かんだぜ。プリンを集めて一斉に歌わせればロケット団をばたばた眠らせられないかな」

残念ながら、おつきみ山は音の反響が隣のエリアまでは届かない不思議な構造をしていた。

「使う場面は限られるけど、人は集めておこう」
「俺達も眠らないようにしないとだな」

「少年達、面白い事をたくらむじゃないか。我々やまおとこも混ぜてくれ」
「プリンをつれてるトレーナーなら、私達ミニスカートに任せなさいよ」

話が耳にそっと入ったトレーナーがトレーナーを呼び、大がかりになっていく。
ポケモンセンターの外で会話していたのもあるだろうが
その為には、イライラしない事が求められる。

それは、ポケモンセンターが混乱状態を脱して、平常営業に戻っている事を示してくれる。

「人が多すぎる。俺には指揮しきれない」
「おいおい。いまさら投げだすのかよ」
「俺やリザードが、せっかく乗り気になってきたのにさ」

「だから、出来そうなトレーナーに頼もうと思うんだ」
カイトが目をつけたのは、ポケモンセンターに入ってすぐに列整理を始めた彼だった。

「ということで、君に全体的な指揮を頼みたい」
「何が、ということで。ですか。他にも人はいるでしょうに。あなたとか」
「ポケモンセンターの混乱を鎮めるとかできないし、それが君の能力の証明になる」
「どう考えても貧乏くじじゃないですか…。私の指示に従ってくれるんでしょうね?」

納得いかない顔をしながらも彼…ユキは、指揮官になるのを受けてくれたのだった。


この場に集まったトレーナーを、おつきみ山を占領しつつあるロケット団に対抗するため
カイトによって指揮する事にされたユキが最初にしたのは、
やまおとこ達を集めて、おつきみ山の地図を作りなおすことだった。

おつきみ山はハナダシティまで抜けるように、いくつかの階層に分かれた広い空間が存在している。
そこから、細い通路を介して、小部屋と呼ばれる少し広い空間につながっている。

「この大部屋には、通路がこことこことここにあったはずだ」
「こっちの通路は小部屋につながっていたな」
「だが、小部屋は行き止まりだったはずだぞ」
「となると、この大部屋の封鎖したら数人派遣するだけでよさそうですね。各個撃破してもらいます」

小部屋は、人間が通れる道は1つで、それ以外に
体力回復等の目的で物理的に小さくなる事が出来るポケモンなら通る事が可能な抜け穴が存在している。
そのつながりも、やまおとこ達は全て記憶していた。

「この小部屋は、ここと、ここからならポケモンだけなら通れるはずだ」
「問題は、こちらから行けるという事は…」
「うむ。向こうからも来れるということだな。気が付いていれば、ではあるが」

化石を見つけたりかけいの男ミツハル、言いだしっぺのポケモントレーナーカイト。
この2人にやまおとこのダイチを加えた先遣部隊。

「あなた達は3人のポケモンで小道からロケット団の足元に水を撒いて、トレーナーに電撃を。
 これを…そうですね、3回ほどやるとバレるでしょうし2回でいいでしょう」

「感電させたタイミングに合わせて、小部屋に直接トレーナーが乗り込み、制圧します」
「おいらのキャタピーがはく糸は強力だからな。簡単にはほどけないぜ」

「それと並行して、同じようにプリンによる歌で眠らせていきます。
 こちらも寝たタイミングを見計らって直接トレーナーが乗り込んで制圧します」

3人ほどで固まって作業をするだけのロケット団したっぱならば、これで制圧できるだろう。
だが、これだけの人数を動員するとなると指揮官の存在が想定される。
しかし、その所在は不明。

どこに居るのか、指揮官を取り押さえなければ
おつきみ山の問題は解決しないし、より危険になることが予想できる。

その判断は10才のポケモントレーナーに委ねられた。

構造上、どこかの小部屋では他の小部屋に対し情報伝達速度が悪化する。
だが、3つある大部屋…広い空間での目撃情報が、いずれも存在していない。

ともすれば、おつきみ山の中の一体どこに居るというのだろうか。

考えろ、考えろ、考えろ。
目撃されていないなら、逆に目撃できない場所はどこだ…?
地図を頭に叩き込め。死角はどこだ。
考えろ、考えろ、考えろ。

真実を見つけ出せ。

小部屋は抜け道含めて、複数方向から確認している。
死角は無い。
通路においても小部屋を確認できる程度に接近した。
そこにもいない。

ここから三つ目の大部屋まで見てきている。
となれば、最初と二つ目の部屋は確実に居ない。
三つ目でも目撃されていない。これ以外だと山の外にしか…外?

「ダイチさん!それぞれの部屋からハナダシティ側の外と繋がってる抜け道はありませんか?」
「わしは把握していないが…、誰か知っているやつは居るか?」

「ここから、ハナダシティ側の中腹に抜けてたはずだ。こちら側からはいけないから失念していた」

これだ。
ハナダシティ側の山肌から抜け道を通じて指示を各部屋に直接届ける。
ラグはあるにしても、部屋と部屋を抜けるよりよっぽど早い。
そして、相手の指揮官は…
「向こうの指揮官はハナダシティ側に抜けた先です!向こうの警察に連絡を!」

「作戦の実施を。彼らを全て捕まえましょう!」








結論から言おう。
ロケット団のしたっぱを18人ほど捕える事は出来たのだが…、指揮官には逃げられた。
捕えた者から話を聞くと、指揮官はアーボとドガースを使う、ニャースを連れた2人組。

カイトやユキが、彼らと戦うことはあるのだろうか。