「貴女に呼ばれることがあると思いませんでしたよ。ディーナ様」
「貴方なら、戦闘部門所属でも開発部門所属でもないですから」
WIZ-DOM魔術学院。
その宿直室に、ディーナとカイ、そしてマギナの姿があった。
ディーナの声に、戦闘部門の部分がやたら強調されていたことも付け足しておく。
「それで、何用です?」
マギナが初めて口を開く。
「この古文書が、ゴーレムの作り方を書いているようなのですが」
「ゴーレムか…。ゴーレム?」
WIZ-DOMの資金源である経済部門の商品売り上げは相変わらず伸び悩み
開発部門であるクラリスのゴーレムだけが一定の売り上げを計上していた。
その最中で、ゴーレム製造法が見つかったとなれば、答えは1つである。
「コレを元に経済部門として作れ、と?」
「ジリアンに許可は取ってきてるわ。だから、お願いね」
「私たちもお手伝いしますから」
ディーナ様も、自分の管理する部門が危ないからか
包囲網を展開するのが速いようだ。
部屋の入り口には既に、2人の生徒がこちらを見ている。
術印を持つ少女 ルツィエ。
「正式に」男子生徒として入学しているルカ。
直接顔を合わせる機会は無いが、お互い名前と顔は一致している。
「…本気か?」
「もちろんよ!」
「それだけじゃないんだけどね」
こうして、マギナを中心としたゴーレム製造法を復旧させる
作業が始まっていった。
「…これ、本当にゴーレムか?」
「そうよ?当然でしょ」
ルツィエは、言い張っているが目の前にある材料は、どう見てもケーキの材料だ。
「どう見てもケー…」
「ゴーレムです。そういう事にしてください」
マギナに遮られる。
これ以上、聞いても仕方が無いのでおとなしくケーキを作ることにする。
そして5時間後、4人の前には高さ1mのケーキが鎮座していた。
「…流石に、疲れた」
「お疲れ様です」
「もっと頑張ってくれると思ったのに」
「無理を言うな…中にあんなもの仕込むと思わなかったぞ」
マギナの指示に従って、土台を作ったのがルカ。
その他は全てカイの担当だった。
「っていうかさ、役割分担間違えてないか?ルツィエさん?」
「私は企画、マギナが支持して貴方たちが作る。問題ないでしょ?」
ルカも割りと楽な場所をあてがわれていた。
という事は、つまりそういう事らしい。
「…納得しないが納得しておこう。で、何故この企画を?」
「もうすぐ分かるわ。早く着替えなさい、ほら」
ルツィエが紙袋を渡してくる。
中に入っているのは…礼服。
「…理解出来ないんだが」
「あの子が来ちゃうから早くしなさいよ!」
このまま怒らせても得することはないので、さっさと着替えることにする。
そして、着替え終わって部屋に戻ると、ルツィエやマギナも礼装を着ていた。
「…」
「何よ?」
「ジリアンさんほどじゃないが、似合ってるな」
「当然でしょ!この私が着てるんだから…そろそろ来るわね」
そして、手渡されるもの。
それは、クラッカーだった。
扉の前に全員、あの人が来るのを構えている。
足音がゆっくりと近づき、ドアノブに手が掛けられる。
扉が開くと同時にクラッカーが4つ鳴り響く。
「「「リサ!誕生日おめでとう!!」」」
つまりは、そういう企画だったようだ。
4人組が3人しか居なかったことも。
その後、巨大ケーキを5人で片づけるのに苦労したのは言うまでもない。