「兄さんも、ポケモン研究者になりたいからって…どうして可愛い妹をジョウトに送り込むかなぁ;」
ジョウト地方ウバメの森。
一人のトレーナーが、さまよっていた。
「盗まれちゃったワニノコも気がかりだし…どうしようか?二人とも。」
手元には二つのモンスターボール。
その中には、マグマラシとベイリーフが入っていた。
この二匹の他に、本来ならばもう一匹つれて旅に出ているはずだったのだが
受け取り場所であったウツギ研究所に彼女がたどり着く直前に、ワニノコを盗み出されたのだ。
その後、ヒノアラシとチコリータ、道中でゲットしたオニスズメをパートナーに
盗み出した犯人を追いかけつつ、各地にあるジムを攻略し、水ポケモンを捕獲している。
そして、先ほどヒノアラシとチコリータがそれぞれ、マグマラシとベイリーフに進化したのだが…
ベイリーフが首回りから発する興奮する香りの作用で、野生ポケモンに襲われかけたため
必死に逃げ回っているうちに、道に迷ってしまったのだった。
「貴女、困っているようね。」
どこからか、声が聞こえた。
「ベイリーフが進化したばかりで、自分で匂いをコントロールできないってところかしら?」
「…上?!」
声のする方向に顔を上げると、一匹のヤミカラスが彼女を見ていた。
「これを・・・」
ヤミカラスは、彼女を見据えたまま、スカーフを下に落とした。
「…これをつければ、ベイリーフの匂いは抑制されるわ。」
一呼吸置いて、ヤミカラスは言葉を続ける。
「ただし、そのスカーフには対価が必要よ。」
「対価?」
「この私を、連れて行きなさい。そして…あるものを手に入れて欲しいの。」
「人語をしゃべるヤミカラス…面白そうだし、兄さんも興味ありそうだから…いいよ。」
彼女は、ヤミカラスが落としたスカーフを手に取り、代わりにモンスターボールを置く。
人語をしゃべるヤミカラス。
後に、アリスと名づけられ、笑う錬金術師の異名を得るマッドサイエンティストとの出会い。
すべては、ここから始まった…。