「では、兄さん。この子をお願いね。」
「あぁ、アイツが楽しみにしているしな。任せてくれ。」
コガネシティのポケモンセンター。
アレは、ウバメの森で捕まえたヤミカラスを、カントーにいる兄さんに転送するところだった。
うん、ちゃんと覚えてる。
あのときに、彼を見ていなければ、私の旅も簡単だったんだと思う。
私が知る限りの彼のことを先に話しておくね。
彼は、ポケモントレーナーの1人だった。
フスベの出身で、例に漏れずドラゴン使いを名乗っていた。
実際に手持ちもカイリューを中心としたパーティだったし、疑問に思わなかった。
兄さんとの通信のときに、彼が通話に混ざってきたんだっけ。
「おや、君は…カイ君じゃないか」
「…久しぶりだな、出歩いている事はあまり歓迎できないが。」
「気にするな。君が、やるべきだった調査がボクに回ってきたまでだ。」
「それは、いいな。それで、だ。妹と話をしているところだったんだが…」
そのときに兄さんの顔は今でも覚えてる。
しまった、つい口が滑った。というあの顔を。
実際に、それが余計な一言だったんだと気がついたのは、その翌日だった。
「ふむ?…ならば、彼女の力を借りることにしようか。君は、あの島から出てこないのだろう?」
「しばらくは動けないな。仕方ない、ケイ、頼む。彼に力を貸してやってくれ。
トレーナーとして色々学ぶこともあるだろう。」
その時から、私は彼とともに1年の旅をすることになる。
…この話、言っちゃっていいのかな?