さてと…、いよいよ始めようか
私達の、伝説との物語を
私たちを待ち受けていたのは、1人の女の子。
氷の抜け道で見かけた子だったんだ、その子はポケモントレーナー。
「はじめまして、でしょうか。私はユキって言います。この子達は…知ってますよね?」
「エンテイに、ライコウ…」
「スイクンまでも…?」
ユキは、スイクンを完全に従えてたよ。
エンテイとライコウは、私とレオナの前に進み出てきて……バトルを挑んできたんだ。
一歩踏み外したらまっさかさまな細い崖道の上で
ダブルバトルじゃない、シングルバトルを。
「エンテイもライコウも、あなたたちに来て欲しい場所があるそうです」
「あなたのポケモンじゃないの?!」
「いきなりバトルなんて…、アンリ!」
ポケモンたちに対して、ユキの様子が何かおかしい。
「私のポケモンは違いますよ。この子達ならスイクンだけです」
「なら…、行くよ!ロッソ!」
腰のボールをひとつ取り、エンテイに向けて投げる。
中から出てくるのは、ウツギはかせから受け取ったヒノアラシの進化系バクフーン。
「"でんこうせっか"!」
相手の情報がなさ過ぎる時は、けん制しつつ様子を見る。
「アンリ、"でんじは"から"こうそくいどう"!」
いつの間にか背中合わせになったレオナも、様子見に入るみたいだ。
「伝説のポケモン相手に、小手先のわざは通用しないですよ?」
ユキの言うように、エンテイもライコウも衰える様子はまったくない。
かといって、一歩間違えれば滝に飲まれるというこんな場所ではろくに戦うことも出来ない。
「…滝に飲まれる?ロッソ戻って!」
滝に飲まれるよりは、滝に身体を預ける。
バトルは周囲すべてがフィールド、利用できるものは何でも利用する。
「水の流れを乗りこなすよ!」
2番手は、タンバへの道中で出会ったランターンのジャッロ。
滝登りを覚えているジャッロならば、滝を自分のフィールドとして自在に動ける。
「"バブルこうせん"!」
エンテイは炎タイプ。
水タイプわざのバブルこうせんならと、撃ってみるけど効果は薄い…どころか
すべてを踏み砕き、ダメージを受けている様子がない。
そして、エンテイのかえんほうしゃ。
ジャッロの居る位置よりはるか上を狙っている。
それでは当たることは…、上?
エンテイのそれは、流れ落ちる滝を蒸発させていた。
滝は上から水が落ちてきて、存在するもので、その上にある落ちてくる水が
そのまま蒸発するということは……。
「やばっ、戻って!」
滝が完全ではないものの消滅し、ジャッロが落ちるところを急いでボールに戻す。
なんていう火力…、これが伝説のポケモン……。
「アルコ!…"あまごい"から"ウェザーボール"!」
次のポケモンを急いで出すと同時に指示を飛ばす。
ジョウト地方では見ることのない貴重なポケモン―ポワルン。
天候を操り、またその天候により姿を変える。
姿と同時にウェザーボールのタイプも変質する。
「タイプ一致の高出力弱点わざ、あなたに受け止めれるかな?」
ポワルンは、水の一滴…じゃなくて太陽のようなオレンジ姿。
「晴れの炎?まさかこの水は、雨じゃなくて…」
滝の水しぶきを雨と誤認して、実際の天候は晴れ。
あまごいの直後ににほんばれを使われた?
「生半可じゃ駄目って事ね…。でも!」
「それなら"すなあらし"で更に天候を変えるだけ!」
天候が変化したことでポワルンの姿は、変質する。 すなあらしの場合は、普段の状態になる。
だが、ウェザーボールは天候の影響を受け、そのタイプは岩になる。
「炎なら半減されるけど、これなら!」
バブルこうせんと違ってエネルギー弾であるウェザーボールは、
踏み砕かれることなく、エンテイへと命中する。
「もう一度"ウェザーボール"!」
大技の部類だけど、今アルコが使えるわざはこのひとつだけ。
すなあらしも時間がたてば収まる。そうなれば、通じなくなるかもしれない。
ならば、今のうちに。
「撃てるだけ連射する!」
アルコが体をくるりと回転させながら、残りの3発すべてを
エンテイの影へと撃ち込む。
「3発しか撃てない……プレッシャー?!」
本来のウェザーボールならあと8発は撃ててる筈…。
となれば、技を出せる回数を減らすプレッシャーとくせい!
「となると…、"はかいこうせん"!」
全身のエネルギーを集中させ、更に周囲のエネルギーも圧縮
それを一箇所に向けて撃ち放つおおわざ、はかいこうせん。
その反動は大きく、数秒とはいえ体は硬直し、動けなくなる。
「これは流石にダメージ通るよね?」
技とすなあらしによって巻き起こっていた砂煙が晴れてゆく。
その中で、エンテイは立ち位置を変えることなく、その場に立っていた。
「えー…、伝説は半端ないね。でも、他の伝説とも戦った私たちなら!」
「そうだね、ルキ。私たちならこの状況も打開できるよ。きっと!」
さて、誰も倒れては居ないけど…全力で行こうか!