最後の戦いのひと時を

「エンテイが、パワー負けして…飛べない?!」

兄さんたちの言う結界を構成するには、エンテイ達がミュウツーより高い位置に飛ぶ必要がある。
だけど、ミュウツーはルギア、ホウオウを相手に引かなかっただけあって相当の力を持つ。

「アリス!相手の技を無効化!クロスはかく乱!」
「ピジョット、クロスに続いてかく乱を!」
「カイリュー!ハクリュー!2体で押さえ込め!」

兄さんたちから、ヤミカラス、オニドリル、ピジョット、ハクリュー、カイリューが放たれ
ミュウツーの前に立ちふさがる。

ピジョットが生み出す風に乗ったオニドリルが、ミュウツーの視界をふさぎ
ハクリューとカイリューが、力の一撃を撃ち放つ。
ミュウツーのエスパー技はヤミカラスがその身で、すべてを打ち消す。

「今です、行きましょう!」
「そうだね…、エンテイ!」
「お願いね、ライコウ!」

空中に存在する3点を目指して、3体のポケモンが地を蹴り空へと駆け飛ぶ。

空に舞うホウオウからエネルギー弾が放たれ、
それを受け止めたエンテイは、フリーザーとサンダーに送る。
ライコウも同様に、ファイヤーとフリーザーへ
スイクンはファイヤー、サンダーへとエネルギーを送り届ける。

ほぼ同タイミングでルギアから放たれたエネルギー波は
ファイヤー、フリーザー、サンダーを通じて
エンテイ、スイクン、ライコウへと届けられ、ラインを形成してゆく。

ラインによって空中に描かれる立方体が、そこには出来上がっていた。
「…ライン形成完了!あとは想いを伝えるだけだ!」

レオナの胸元にあったペンダント。
たまたま見た骨董屋で惹かれたから買った。
それだけのペンダント。

それが、この場、結界に対して共鳴反応を起こしていた。
「共鳴反応…ライコウが選んだだけはありますね」

「ミュウツー!これ以上争おうとしないで!静かに…、静かに暮らして構わないから!」

レオナの叫び、その想いは、ペンダントにより増幅され結界の中を満たそうとしていた。

「カイト、やはり彼女は……」
「トレーナーよりも、レンジャーだろうな。今度、話してみるさ」
「頼む。レンジャーは人材不足だからな」


レオナの想いが結界内を満たしたとき、ミュウツーの戦闘意欲は消え去り、
すべてのポケモンが、安らぎを得ていた。

「ミュウツーは責任を持って、このワタルが捕獲させてもらう。
 といっても、ボールマーカー付けておくだけだけどね」

誰が捕獲したポケモンかを示すため、捕獲されたポケモンは
ボールマーカーと呼ばれるものを付けられる。
これは、捕獲者の他に、捕獲した場所のデータが登録されると同時に
他のボールのキャプチャーネットを弾く特性を持っている。
これにより、ミュウツーを第3者からの捕獲を防ぐと言う事なのだろう。

ワタルがミュウツーを説得し、ボールに入れる。
そして、登録完了後はボールから出して、自由にさせている。

「良かったのか?手持ち埋めて」
「あくまで大会に使うのが6匹までと定められているだけさ」

7匹以上連れてもかまわないが、大会等に使用するのは6匹まで。
ポケモンリーグ公式ルールとして定められていて
コレは何故か、悪の組織を謡うロケット団ですら守られている。

「さて、終りましたし、私は列島に戻りますかね」
「ユキ、これを」

兄さんがユキさんに何かを手渡していた。
「これは…、ありがとうございます」
「こっちも客人を迎えに行くかな」

兄さんもユキさんも、ここからは別行動。
私たち3人は…。
「お二人とも、このままポケモンリーグに挑戦してみませんか?」
「ポケモンリーグに」
「挑戦…?」

確かに、ポケモンリーグ出場資格に必要なバッジ8個は集めた。
だけど、今ここで出場するべきなのか問われると
私の心は、決めかねていた……。