真那、生き残る

『あまり緊張するな。ガナーウィザードのテストしたいだけなんだから』
「とはいうけど、ほうげきなんでしょ?」
『相手を撃ちたいと思うだけでいいはずだ。後はバックパックがやってくれる』
「だからってこんなおもたいの」
『来るぞ。マオチャオタイプ1、ハウリン1、紅緒1』

ハウリンに狙いを定めてからバックパックに意識を送る。
(あのハウリンを撃ちたい)
直後、砲弾が2発バックパックに装備されたFB256 1.2mm滑腔砲から放たれてハウリンに命中。
彼女の身体が光り輝き、ポリゴンへと還元される。
それを確認してから再び、バックパックに意識を送る。

(次は紅緒を撃ちたい!)

バックパックに装備された脚が身体を安定させて、滑腔砲を2発撃つ。
だけど、紅緒は空中を切り裂く。
違う、あれは
『まさか、弾丸を斬り裂くレベルの奴が居るのか。ひとまず、マオチャオへ』
「りょうかい」
(マオチャオを撃って!)

こちらの砲撃に気をとられた紅緒にドリルで攻撃を仕掛けようとしていたマオチャオに
砲弾が3発命中。ポリゴンになって消えていく。

「…先ほど砲撃してきたのは、貴殿かな?」
「そうだとしたら、どうするのかな?」
「私の獲物を…いや、さっさとしとめなかった私のふがいなさが原因か。だが…」
その左腰に備えた刀に手をかける紅緒タイプ。
『お前さん、何者だ?』
「戦場にいる神姫が2人。今、名乗るのも無粋であろう」
『……フェイズ2へ移行。全力でいってこい」
「うん!」
滑腔砲を畳み、手を伸ばすとそこに1振りの巨大な剣が転送されてくる。
大剣ギラファブレイド。
両手で掴み、紅緒をにらむ。

「…紅の銃斬、べにたん。参る!」
「ますたー、のあ、ふたりのちからを!」
べにたんがその身を屈めて、突進してくる。
それを脚部バーニアを吹かせたジャンプで回避。
そのまま身体を回転させて、ギラファブレイドを叩き込む。
しかし、べにたんもそれを横にそれて回避。

「背中が重そうだが、思いのほか動くではないか」
「ますたーたちのおかげ。だからまけない」

今度は真那から仕掛ける。
脚部を展開して4足による設置性、ギラファブレイドの重量を乗せた一撃。
だが、べにたんはそれを刀1つ、滑らせるように攻撃そのものを斬っていた。
その上で小太刀をギラファブレイドの刀身へと当てる。

『ギラファブレイド解除』
「わかった」

元々、ギラファブレイドはリノケロスを芯にしてジュダイクスを組み合わせることから出来ている。
そしてべにたんは、その構成する隙間を斬る事で、ギラファブレイドとしての役割を殺したのだ。

邪魔になるバックパック…ガナーウィザードとリノケロスをサイドボードに戻し、残ったジュダイクス2振りを両手に掲げ、べにたんと改めて向き合う。

「シンプル故にいい姿じゃ。だが、勝つのは」
「かつのはあなたじゃない。このアタシ」

二人の足が動きだし、影が交錯する。
直後、ジュダイクスはポリゴンへと姿を変え、世界から消えていく。
「見事、だが…惜しかったの。武器がなくてはこの後、勝ち抜けん」

べにたんはその身体をポリゴンへ、光へと姿を変えていった。
「もんだいない。ますたー」

『残りの敵は……後ろへ跳躍3歩、右へ1歩!』
サイドボードから再び、ガナーウィザードが転送されてくる。
そして、上空から降り注ぐビーム。

「あら、油断しているようで油断してませんか。…でも、降参してもらえませんか?」
「でもことわる」

見上げる先に居たのは、天使アーンヴァルMk.2型京香。
『撃墜数5…という事は、最後の1人で、他の神姫全員を倒したのか』

このサバイバルバトルに参加していたのは10人。
真那が3人倒し、自身と相手を入れて5人。
「はい。私が残りの全員を倒させてもらいました。どうしても1位になりたいんです。だから、降参してもらえませんか?」
優しい表情を浮かべながらも、GEモデルLC5レーザーライフルのチャージは行われていく。

「かつのはアタシ」
京香は、レーザーライフルの出力を落とし、アルヴォPDW11と合わせて、弾幕を作り出す。
紙一重で回避しながら、真那はマスターの指示を待つ。

どうする…どうすれば勝てる?
相手は高高度からの射撃。
こちらも射撃の手段はあるものの、高いところから低いところを狙う方が有利であり、真那は低い側にある。
得意とする格闘戦を挑もうにも距離が、その高度が遠い。

『遠いなら、近づけてやればいい。ガナー分解、自己射撃!ウィザードを自立モードへ』

ガナーウィザードを背中から外し、本体であるバックパックを
パンツァーサックとしての自立モードを起動させるが、滑腔砲を真那が持つ為、武器はない。

「もくひょうをねらいうつ」
真那が狙うものの、弾幕をよけながら、かつ真那の射撃管制ではロックが出来る状態ではない。
「そのような状態でのロックをしようなどっ」
それでも、万が一ロックされた時の危険性を考慮すれば、注視せざるを得ない。
何よりも、真那を倒せば自分の勝ちなのだ。
滑腔砲を失い、武器のないパンツァーサックなども敵にあらず。
「残念ですが、これで終わりです!」
連射から、広範囲へのランチャーモードに切り替えた最後の一撃。
それに対して、真那は手持ち武器である滑腔砲を投げ、爆発させながら爆風にわざと飛ばされることでダメージを減衰させる。

「そのような策ぐらいで!」
身動きの取れない真那へとアルヴォPDW11を向けて、引き金を引こうとしたその時
パンツァーサックが、その射線へと割り込み、撃たれる。
『残弾5発、全部持っていきな』
「こんな、手で負ける…なんて…」

アルヴォPDW11の火力がさほど高くなくても、誘爆させるには十分だったようだ。
その爆発に包まれ、ポリゴンへと姿を変えていく。

「…アタシのかち」

真那がサバイバルバトル1位というのを確認してから、ログアウトする。

「君が、今の優勝者のマスター…だね」
「それが何か?」
「そして、雪納のマスター、で合ってるかな?」
「雪納まで知っているのは珍しいが…バトルの苦情なら受けないぞ。今決着ついたしな」
「いや、お礼を言いたい。京香を、救ってくれてありがとう」

これが、真那と京香、海人と恭二の最初の出会いだった。