雪納、覚醒する

バトルモードを展開し、副腕で殴りかかるものの、アクスさんはびくりとも…してますね。

戦闘バランスはとても高いのに対して、直立バランスが悪いのは改善されていないようです。
と、油断をすると真鬼王の腕に付けられたバスタークローが、抜き手を放ってくるのを
アサルトカービンのマガジンを投げつけて、小爆発により強引ですが、回避。
そのアサルトカービンを、アクスさんに掃射しますが、もう片方の副腕で射線をふさぎ、受け止めてきます。

「流石、つよいですわね」

その間も、リリシアが足元に向けて攻撃を行おうとするものの
インフェルノキャノンとハンドガンによって、近づくことが出来ていません。

私の武装一式は、大幅な改修により、副腕が独立して稼動するようになっています。
マスターと見た"エトランゼ"と呼ばれる同じイーダ型が使っていた機構を私達なりに再現したものです。
これによって、トライクレースでも地面と壁を同時に走る。といった無茶に見える軌道を取ることができます。

ですが、これは同時に強度不足を招くものであり…戦闘の長期化は武装全損の危険性をももたらします。

「強くなければ、覚悟がなければ、ここのチャンプなんてやってられないのさ!」

バスタークローを展開…咄嗟に副腕を地面に押し付けて、そのタイヤの回転だけで強引に後退。
直後、私の立っていた場所を、ビームキャノンが焼き払っていきました。

「リリシアさん、2分でいいので生き残りましょう。そうすればきっと…」
「何をする気か分からぬが…貴殿が言うのであれば、やれるだけやってみようではないか」

アサルトカービンを副腕に持たせて後ろ手に。
それから右手で構えていたエアロチャクラムを両手に。

副腕にあるタイヤを回転させ、そのままジグザグに動きながら、アクスへと斬りかかるもののバスタークローに受け止められてしまいます。
ですが、私の、私達の考えはその上。
私の影から飛び出たリリシアが、バスタークローとアーマーの接続基部へとアサルトライフル・エクステンドを撃ち込みます。

「この威力ならばっ」
「……いいよ。ひとつぐらいなら、譲ってあげるのさ!」

エアロチャクラムを受け止めていたバスタークローは破壊したものの、アサルトライフルもまた
もう1つのバスタークローに貫かれて小爆発。
リリシアさんがダメージを受けていきます。

「二人がかりでコレだけなんて事は、ないんだろ?覚悟しているんだろうからさ」

動きの止まった私達にゆっくりと、アクスが近づいてきたそのときでした。
背中への衝撃。

「予測射撃、ピンポイントに当たってくれるとは驚きさ」

アクスさんが事前にはなっていたミサイルだったようですが…
背中が以上に軽いのが気がかりです。
破壊されたというよりも、これは…

『雪納、待たせたな』
『おねえちゃん、がんばって』

マスターと、真那が通信を送ってきました。
「マスター、早速ですがアレの許可を」
『…アクス相手には仕方ない、か。転送するぞ。回収してたトライクユニットもな』

被弾の直前にマスターが転送回収してくれていたようですが、
その分、装甲がなくなり私に直接ダメージが入る事を分かっているのでしょうか?

アサルトカービンがサイドボードに回収され、変わりにヂェリカンが転送されてきます。
これが、私の切り札。
その名も、B・H・S。
正式名称を、バナナ・ハバネロ・スパークリングヂェリー。
イーダ型を文字通り、暴走させる最後の切り札。

「主、我らも覚悟を決める必要があるようだ」
『…しかたあるまい。転送するぞ』

リリシアさんの手に転送されてきたものも、やはり、ヂェリカン。


「「プロージット!」」

手にしたヂェリカンを、乾杯してから二人で飲み干す。
ここから先は、覚悟がなければ生き残れません…よ?