ふらつきながらも闘志を失っていないアーンヴァルを見ながら、私は考えていた。
どう倒すのが、頂点に立つものとして相応しいか、
豪快に、かつ、対戦相手のトラウマにならないように。
簡単にして、難しい問題。
だからこそ、私は覚悟を問う。
覚悟を持ってくる相手は、全身全霊、全力を持って戦ってもまた立ち上がってくるから。
後のことを予測して、残っていたミサイル2セットにコースと目標を設定する。
「閣下、ロートケーファの許可を」
『この状況下でか…』
私の持つ武装のほとんどを使用して構成されるカブトムシ型支援ユニット"ロートケーファ"。
当然、その間の私は無力に近いものとなる。
フル装備のアーンヴァルに対して、使うべきではないのだろうけど。
「私を信じてください」
「…分かった。お前が信じるワシが、お前の信じるお前の選択を、信じているぞ』
許可を貰って、ロートケーファのAIユニットに指示を送りながら、武装を解除。
オーナーシートから出される指示に従って、それらが組み合わさっていく。
それを阻止しようとする相手がマシンガンを片手に突撃してくるが、慌てている状況ならば
足元に転がる適当な大きさの残骸を投げつけるだけで、射線を防ぐことが出来る。
問題はその後。
ロートケーファが完成、起動したのを通信で確認して私はビルの中へ飛び込み、
階段を駆け上がっていくが、途中途中でその上った階段を飛び降りる。
直後を、LC3レーザーライフルから放たれた光が焼き尽くす。
外で飛ぶロートケーファが逐次情報を送ってくれなかったら、危なかったかもしれない。
焼け落ちた部分は飛び越えて、屋上へと移動する。
そこから、太陽を背にアーンヴァルを見下ろす。
「戦力的に勝てぬ相手であっても、立ち向かう勇気を手に
マスターに勝利を捧げるために舞う!
人、それを『覚悟』と言う!のさ!」
「だ、誰ですか、あなたは!?」
「君に名乗る名前はない!とぅ!!」
地上に居るアーンヴァルを目掛けてジャンプ。
相手も心得たもので、レーザーライフルを捨てて、こちらに飛びあがってくる。
だから私は、両手を握り締めて、前へと突き出す。
さらに足元…上からロートケーファが後押しして加速。
正面からぶつかり合い、そして私達は…
引き分けの結果を導き出した。