Each and All
『アクス、サバイバる』
店内統一ランキングサバイバル。
そう銘打たれた店内全筐体を使用したサバイバルバトルの中に、私は居た。
「アクスさん、覚悟!」
「甘いよ!覚悟が足りてないのさ!」
背後から飛び込んできたサイフォスの一撃を、最小限の動きで回避し、着地直後の硬直に
背中に取り付けられた、バスタークローを突き刺す。
「…隙を見せたら、明日はないぜ。なんて、次の挑戦待ってるよ」
直後、微かに揺れを感じる。
「閣下、地震は?」
『バーチャル空間にある限り、起こらない筈だが…』
「ということは、この揺れ…」
「呼ばれて飛び出てにゃにゃにゃにゃーん!」
ジャンプが一瞬でも遅ければ、マオチャオの穿牙に脚を砕かれていた。
そのマオチャオが、腕を突き出し大声で叫ぶ。
「あたいの一撃を避けるとは、さすがチャンプ!勝負するにゃ!」
「私はそっちじゃないの…さ!」
座標のインプットを完了したマイクロミサイルを発射。
煙を出しながら、上下左右縦横無尽に動き、相手に回避できないものと錯覚させる。
同様の動きをした昔のアニメからマクロス機動…、作画監督の名前を取って板野サーカスという名前があるらしい。
「にゃんとー!?…にゃーんて」
命中する直前、ミサイルが全て撃ち落される。
建物の影に居たのはプチマスィーンズ。
脇に取り付けられたマシンガンでミサイルを迎撃したようだった。
おそらく、地中から奇襲してくる時の私の位置も、プチが情報を集めていたのだろう。
「いい加減、チャンプの座をあたいに譲るにゃ!」
「閣下と私の居場所はただ1つ、チャンプ。それ以外存在しない!」
朱天を構え、マオチャオに…ランキング2位”ドリルダイバー”シロ。
より強く、より早く、より頑強に改修された穿牙ひとつで、その座に立つ実力は生半可ではない。
「ジェノサイドサーカス!!」
「何度やっても同じ事にゃのに!ぷち!」
ミサイルの弾幕で出来た影を利用して、バスタークローを展開。
基部に仕込まれたビームキャノンで追撃を行う。
「あ、危ないじゃにゃいか!」
「今のを避けるなんて流石だね。この店も安泰なのさ」
「皮肉を言うにゃ!!」
今のを避けるのは、セカンド上位以上の手勢ぐらいだったのに。
そんな私とシロに遠くからビーム砲が飛んでくる。
私は展開していたバスタークローをすばやく向けて、Eシールドを展開し、ビームを霧散させる。
その目の前で、シロはビームを穿牙で砕いてた。
「…やっぱり、常識はずれだわ。で、勝負に邪魔はいったけど?」
「お前が言うにゃ。仕切りなおし…邪魔を倒してからにゃ!」
そういうなり、ビームを穿ちながらシロはそっちへと走っていく。
後ろから私がミサイルを打ち込んだらどうするつもりなのやら。
「閣下、ファスト・オーガを!」
『マスターと呼べと…まあいい。ファスト・オーガ転送だ!』
自分のマスターである閣下に、愛車とも言えるファスト・オーガを転送してもらう。
ティグリース型とウィトゥルース型の武装を組み合わせて作られるエアバイク。
ファスト・オーガにまたがり、エンジンをかける。
行く先は、ビル群が並び立つ…廃墟エリア。
メインストリートを走る私に、ハウリン型が4体並んで吠莱壱式を撃ってくる。
ビルの壁をぶち抜いて、その中に入り込むことで回避。
回避した先には、ヴァッフェバニー型と、ムルメティア型。
彼女達の砲撃はファストオーガを横倒しにスライドさせて盾にする。
そのまま、スライディングの要領で懐にもぐりこみ、朱天で斬る。
「いいね、いいね。戦術、戦略、同盟、私を倒そうとするその心意気!」
それと同時に部屋に入り込んでくるハウリンたち。
ファストオーガから飛び降り、二体をバスタークローで貫く。
「でも、足りない。足りないよ。とてもじゃないけど覚悟が足りてない!!」
ポリゴンに変わり消えていくハウリンの残像を気にせず、
バスタークローを展開して、殴りかかってくるハウリンを受けとめる。
「マスターの為に、自身のために、戦う覚悟が足りてないのさ!」
そのまま、ビームキャノンで撃ち抜く。
それを最後に、周囲が静かになる。
シロもしばらくは、私以外を狩るだろう。
「さて、ここからが本当のサバイバルバトル。…かな?」
バトルはまだ、始まったばかりだった。