『私』の旅立ち前夜
今年全く書いてなかったか
いよいよ明日、ポケモンダイヤモンド&パールのリメイクが発売するので
いつもの旅立ちSS
「シンオウ地方の再調査、ねぇ」
「そう。ちょっと面倒くさいんだけどね」
イースティ諸島にある、ポケモン研究所。
その一室に私、アオイと兄であるカイトは居た。
「ミオンは?」
「アリスが作ってる装置の実験手伝い。そのまま別の調査にいってもらう」
「何それ、ずるくない?」
「こっちに来てるメンバーで、別の時代にいっても必ず帰ってこれるのはあの娘だけだろ」
「あー…そういうこと……。なら、仕方ないか」
ミオンは、人間からポケモンになることが出来る特異体質がある。
なにか理由があるらしいけど、私は詳しくは知らない。
「って別の時代って何」
「昔、ポケモンを過去と交換するタイムマシーンってのがあってな。
アリスがそれを、相手が居なくても、ポケモンを送り込んだり、戻したりするための装置に改造してる」
だいぶ昔、私がジョウト地方の第1回調査に行くかどうかって時代に、そういう物があったのは覚えてる。
アリスが私達と出会ったのも、その頃だったっけ。
「それで、今回の調査は何人に許可が出てるわけ?」
「1人だけど2人、2人だけど1人。また、時空振動が観測され始めてるから、多分、行く世界がバラける」
「アローラ調査のときに起きたやつね」
「あの時はまだ、地方に向かった後に世界がズレたが今回は既にズレ始めてるからな」
アローラ地方調査を行った時は、ミュートと兄さんが行って、別世界と繋がったことで、世界の位相がズレて音信不通。
あとからミオン達が向かって、それぞれの世界で問題を解決したことで、世界が戻った。
「そこで、今回はミュートとアオイに行ってもらう」
「兄さんは?」
「こっちでデータ収集観測。アローラの時にデータが取れてないからね」
「てか、私とミュートの組み合わせで大丈夫なの?」
「その2人だからこそ、ってのが一番大きいんだよ。平行世界の同一存在である2人だからこそ、ね」
かつて、時空が歪んだ時、私は『私』と、もうひとりの私にわかれた。
もうひとりの私である、DJアオイと遭遇したらどうなるか分からなかったため、『私』はジョウト地方の調査から外された。
それと同時に、ミュートが、存在しないはずの従姉妹として、存在していることになっていた。
並行世界というものについて、情報が増えていくにつれて、私とDJアオイの関係性は完全に別個の存在になっていることが分かった。
そして、『存在しないはずの従姉妹』であるミュートが、平行世界の私自身だということも。
平行世界の私、に何か起きたとしても、私には何も起こらないし、その逆も同じ。
ただ、常に繋がっていることだけは分かる。
そういうものだった。
「わかった。そういう理由があるならやるよ。それで、権限はどこまで?」
「今までの手持ちは全て置いていってもらうし、こっちから連れ出しは調査が進むまで不許可。というか出来ない」
新しい地方の調査に行く場合、手持ちは全て置いていってその地方のポケモンをゲットするのが基本ルールだ。
だからそれは分かる。
調査が進むまで不許可というのは、時空振動が原因だそうだ。
『私の居る世界』を特定しない限り、『ミュートの行く世界』に転送されるかもしれないし、『2人とも居ない世界』に転送する可能性もある。
それを防ぐためには、その『世界』にアンカーと呼んでる装置を何箇所かに配置して、確実に転送できる体勢を整える必要がある。
どこにアンカーを配置すればいいのか、といった問題自体、調査が進まなければ決めようがない。
うん、理解は出来る。
「……よく、ミュートはこんなの何回もやってるね」
「アローラの時の経験があるからこそ、出来た対策だけどな」
「まぁ、わかったよ。準備してくるけど、出発はいつ?」
「今日の午後」
「は?」
「今日の午後の船でカントーに向かってもらって、そこから飛んで明日到着の予定だ」
「いやいやいやいや、おかしいでしょ」
20分前までは、ミュートとミオンの予定だったのを、さっきの実験とかで連れて行かれたそうだ。
「……つまり、私は予備だったってこと?」
「ミオンと同格で、な。安全策のミオンと、時空振動に強いアオイの二択だったんだよ、元々」
ん?それって私はそこまで安全じゃないってことでは???
「安全策ってのは、確実に通信ルートが確保できるって意味だからな」
ミオンの特異体質は、ポケモンに、イーブイに体を変えるだけじゃない。
何故か、時空振動を無視して、アンカーを使用せずに『世界』を確定した通信ができる。
ミオンから通信を試みた場合だけ、だけど。
「言いたいことはいっぱいあるけど、戻ってきてからにするわ。準備してくるね」
「ああ、頼んだ。それと、今回も、クロスランドからの調査も出るらしいから、会ったらよろしく」
「はーい」